冷たいトマトに塩をひと振りして食べるのは、夏の楽しみのひとつです。ただ、健康面で見ると、生のまま冷やして食べるだけでは、トマトの中心的な成分であるリコピンを取り込みきれていません。リコピンは細胞の壁の奥にあって油に溶けやすい性質のため、加熱して壁を壊し、油と一緒に取るほうが吸収されやすくなります。赤くなるまで冷蔵庫に入れないこと、ジュースを選ぶなら食塩無添加のものを選ぶこと。この3つを意識すると、同じトマトでも日々の取り入れ方が変わります。
毎日続けたときに期待できる体の変化
トマトを習慣にしたときの変化は、血圧や血管、肌など複数の面に分かれます。ただし、どれも即効性を保証するものではなく、生活全体の中の一品としての位置づけです。
血圧が高めの人での変化
国内で食塩無添加のトマトジュースを1年間飲み続けた約500人の研究では、血圧が高めだった人の上の血圧が平均でおよそ4下がったと報告されています。薬の代わりになる数字ではありませんが、毎日の一杯として見れば確かな変化です。トマトにはカリウムも含まれ、100gあたり約110mg、中玉1個なら300mgほどになります。塩分を控えつつ野菜を足すという点でも、トマトは手軽な選択肢です。
悪玉コレステロールが高めの人での変化
同じ研究では、LDLコレステロールが高めだった人の数値が、平均で155.0から149.9へ下がっていました。リコピンにはLDLが酸化するのを抑える働きがあると考えられています。酸化したLDLは血管の壁に溜まるもとになるため、この変化は血管を考えるうえで参考になります。ただし、血管の状態は血圧や運動も含めた生活全体で決まるため、トマトだけで数値が大きく動くとは考えないほうが現実的です。
肌への負担を和らげる可能性
イギリスの小規模な試験では、健康な成人がトマトペーストを1日55gほど、12週間続けたところ、日焼けによる赤みが出にくかったという結果があります。紫外線対策としては、まず日焼け止めや衣服で肌を守ることが前提です。そのうえで、日差しの強い季節の食事に加熱したトマトを取り入れるのは、無理のない補助になります。
旨味を生かした減塩
トマトの旨味は昆布と同じグルタミン酸によるもので、完熟したものほど量が増えます。完熟トマト100gあたりのグルタミン酸はおよそ140mgとされます。刻んで煮物や汁物に入れると、塩を減らしても味がぼやけにくくなります。味噌汁にトマトを加えると、味噌を減らしても酸味と旨味で満足感が残りやすいです。塩分を控えたい人には、調味料としての使い方も役立ちます。
食事量を整える低カロリーな一品
トマトは100gあたりおよそ20kcalで、中玉1個でも30kcalほどです。食事の最初に1個食べるとかさが増え、その後のご飯を食べすぎにくくなります。冷たいトマトでお腹が冷えると感じる人は、スープや煮物など温かい料理にすれば続けやすくなります。
トマトの力を半減させてしまう3つの習慣
冷やした生のまましか食べない
生のトマトでもリコピンは取れますが、細胞の壁に守られたままの多くは吸収されずに排出されてしまいます。加熱したトマトペーストでは、生より約2.5倍吸収されたという研究もあります。週の半分は炒めたり煮たりして、油と一緒に取るのが現実的な目安です。
食塩入りのトマトジュースを毎日飲む
健康のためにと選んだトマトジュースでも、食塩入りの商品は1本200mlあたり0.5gから1g近くの塩を含むことがあります。血圧を気にして飲んでいるのに塩を足していては、目的とずれてしまいます。表示を確認し、食塩無添加と書かれたものを選びたいところです。
赤くなる前に冷蔵庫へ入れる
トマトは低温だと熟すのが止まりやすい野菜です。赤みが浅いうちに冷やすと、色も甘みも伸びません。赤くなるまでは直射日光を避けて常温に置き、真っ赤になってから食べる直前に冷やすのが順序として無駄がありません。
売り場で迷わないための選び方
- ヘタが緑でずっしり重いものを選ぶ。ヘタがピンとして濃い緑なら収穫から間もない目安です。同じ大きさなら重いほうが中身が詰まっています。
- ミニトマトを間食や彩りに使う。ミニトマトのビタミンCは100gあたり約32mgと、大玉トマトの倍ほどです。洗ってすぐ食べられる手軽さもあります。ただし、丸ごと口に入れると喉に詰まりやすいため、飲み込む力が落ちている人は半分に切って食べてください。
- 缶詰やジュースは表示で選ぶ。ホールトマトの缶は完熟してから加工されるものが多く、煮込みに向いています。ジュースは食塩無添加で原材料がトマトだけのものを選ぶと、果物や砂糖の摂りすぎを避けられます。
吸収を助ける食べ合わせ
トマトと油を組み合わせると、リコピンが吸収されやすくなります。オリーブオイルでなくても、ごま油や普段使っている植物油でかまいません。大切なのは油を少し合わせることです。
- トマトとオリーブオイル。くし切りのトマト1個にオリーブオイル小さじ1を回しかけ、フライパンで表面を軽く焼くと甘みも増します。
- トマトと豆腐。豆腐に含まれる大豆の油もリコピンを運ぶ手伝いになります。豆腐半丁に角切りのトマトをのせ、オリーブオイル小さじ1と塩ひとつまみで仕上げると、夏の食卓に続けやすい一皿です。寒い季節は鍋で軽く煮ると温かく食べられます。
- トマトとサバ缶。魚の油がリコピンを運び、トマトの酸味がサバの生臭さを和らげます。サバ缶半分とトマト1個を鍋で5分ほど煮るだけなので、夕食にも手軽です。
気になる場合の目安
腎臓の病気でカリウムを制限している人は、トマトにカリウムが多めに含まれるため、量を主治医や管理栄養士と決めてください。朝に食べたほうがリコピンが血液に入りやすかったという小規模な試験はありますが、朝でなければ意味がないわけではありません。缶詰はリコピンを取り入れやすい一方、ケチャップは砂糖と塩が多いため、大さじ1杯程度の調味料として使う範囲にとどめるのが安心です。
トマトは、冷やして生だけで済ませるより、赤くなるまで常温で待ち、食べる直前に冷やし、温めて油と合わせることで、日々の食卓でより役立つ食材になります。まずは1個を軽く焼いて油をひとたらしするところから始めてみてください。体調や持病に合わせて、無理のない範囲で続けることがいちばんの近道です。