焼き魚の横に大根おろしを添える。先にすりおろして台所に置いたまま、味噌汁をよそっているうちに時間が経つ。大根おろしの辛味成分は、すりおろした直後がいちばん多く、辛味の強い先端部では30分ほどで半分近くまで減るという報告があります。食べる直前にすりおろすか、あえて少し置くか。その違いで、味わいも食卓での役割も変わります。
下ろすタイミングで変わるもの
大根の辛味は、細胞がつぶれたときに生まれるイソチオシアネートという成分によるものです。丸ごとかじっても、すりおろしたときほど辛くないのはそのためです。辛さを和らげたい場合は、すりおろして少し置くのも方法です。ただしビタミンCは空気に触れて時間とともに減っていくため、置くならラップをぴったりかけて冷蔵庫へ。醤油を足しすぎないためには、辛味と水気が残るおろしたてが助けになります。
台所ですぐできる3つの習慣
1. 食べる5分前から直前にすりおろす
まとめてすりおろして置くと、辛味成分が時間とともに減り、ビタミンCも少しずつ失われます。夕食の支度の最初ではなく、焼き魚を盛り付ける直前にすりおろすのが基本です。どうしても先に用意するなら、ラップをぴったりかけて冷蔵庫へ。常温より減り方はゆるやかになります。
2. 汁を強く絞って捨てない
水っぽさを避けようと汁をぎゅっと絞ると、水に溶けやすい酵素やビタミンCまで流してしまいます。軽く水気をきる程度にとどめ、残った汁はポン酢と混ぜてたれにするのも手です。
3. 皮ごとすりおろす
皮の近くには辛味のもとが多く、ビタミンCは皮付きでも皮なしでも大きな差はありません。よく洗って皮ごとすりおろせば、むだと食品ロスを減らせます。繊維が気になるときは、目の細かいおろし器を使うと口に残りにくくなります。
大根の部位と選び方
大根は葉に近い首の部分が甘く、先の細い部分が辛いとされています。辛味を楽しむおろしには先のほう、刺激を抑えたいときは首の甘い部分を少量使うのが目安です。力を入れて早くすりおろすほど細胞がよくつぶれて辛くなるため、円を描くようにゆっくりすりおろすと和らぎます。
- 首:甘い。サラダや煮物、刺激を抑えたい大根おろしに
- 真ん中:ふろふき大根など加熱料理に
- 先:辛味が強い。薬味として少量使う
選ぶときは、同じ大きさならずっしり重く、ひげ根の穴が少なくまっすぐ並んだものを。切り売りは断面がみずみずしく、中心にすが入っていないものを選びます。冬の大根は寒さに当たって甘みが増すと言われ、夏の大根は辛味が強めなので量を控えめにすると食べやすくなります。葉がついていたら、持ち帰ったらすぐに切り分けてください。根の水分が葉にとられ、すが入りやすくなります。
葉も捨てずに使う
大根の葉は、100gあたりのカルシウムが根の約10倍、牛乳の2倍以上というデータもあります。ビタミンKやβカロテンも多いので、刻んでごま油で炒めてふりかけにしたり、味噌汁の具や炊きたてのご飯に混ぜたり。炒めたものは冷凍して1か月ほど使えます。無理のない範囲で一品に加えてみてください。
減塩に使う大根おろしの組み合わせ
焼き魚に醤油を回しかける代わりに、大根おろしに数滴垂らす。辛味と水けが味に輪郭をつけるため、薄味でも物足りなさを感じにくくなります。国の調査では、日本人の食塩摂取量は平均で1日9.6gと、目標の男性7.5g未満・女性6.5g未満を上回っています。大根おろしは味を足すより、香りと食感を足す感覚で使うと無理なく減塩につながります。
- ちりめんじゃこ:カルシウムは多いが塩分も多い。醤油をかけず、大根おろしの水気だけで食べる
- なめこのみそ汁:火を止めて器によそってから大根おろしを乗せる。酵素は熱に弱いため煮込まない
- さんまの塩焼き:塩は軽く振る程度。油の多いさんまも大根おろしで最後までさっぱりし、内臓の苦みも和らぎやすくなる
胃が弱い人、薬を飲んでいる人への注意
辛味が強い大根おろしは、胃に刺激を感じることがあります。胃腸が疲れているときは、首の甘い部分を少量から試すのが無理のない方法です。
ワルファリンなど血液を固まりにくくする薬を使っている人は、ビタミンKを多く含む大根の葉を大量に食べ続けるのは避け、主治医や薬剤師に相談してください。根の部分まで一律に制限する必要はありませんが、心配な場合は確認をしておくと安心です。
冷凍はできますが、解凍すると水っぽくなり、辛味も弱まります。保存のための手段と考え、できれば食べる直前にすりおろすのがおすすめです。
大根おろしは、すりおろす時間、汁の扱い、皮、葉の使い方で、食卓での役割が変わります。すべてを一度に変える必要はありません。今夜の焼き魚に、盛り付ける直前にすりおろした大根を添えるところから始めると、いつもの一皿が少しさっぱりし、醤油も控えめになります。