「夜にりんごを食べると毒になる」という言い伝えを聞いたことがある人も多いかもしれません。結論から言えば、りんごそのものが毒に変わるわけではありません。ただ、食物繊維が多く消化に時間がかかる果物なので、食べる時間や量によって体への負担は変わります。
1日1個のりんごをやめる必要はありません。時間を分けて食べれば、朝・昼・午後のおやつ・夕食後まで無理なく取り入れられます。ここでは、時間ごとの量と、損をしやすい習慣を整理します。
朝は皮ごと4分の1個を習慣にする
朝食がパンとコーヒーだけになりがちな場合、りんごを4分の1個添えるのが現実的な入り口です。4分の1個はおよそ70gで、エネルギーは40kcalほど。皮ごと食べると、水に溶ける食物繊維のペクチンを摂りやすくなります。
ペクチンは腸の中で善玉菌の餌になると考えられています。りんごを2週間食べ続けた人でビフィズス菌が増えたという研究もあり、腸の掃除というより善玉菌の朝ご飯として捉えると続けやすいでしょう。
なお、朝に花粉症の薬を飲む人は、りんごジュースで流し込むのは避けてください。一部の薬では吸収が弱まることが知られています。
昼前の1切れで食後血糖をゆるやかに
昼にうどんや丼ものをかき込むと、午後になってまぶたが重くなることはないでしょうか。食物繊維を含むものを先に食べると、食後の血糖の上がり方が緩やかになるという研究があります。
りんごのGI値は38ほどで、白いご飯の半分程度。先に食べた繊維が、後から入るご飯の糖の吸収をゆっくりにすると考えられています。量は2切れまでで十分です。その分、ご飯を一口減らせば食べすぎも防げます。外食の日は、切ったりんごを小さな容器に入れて持っていくのも方法です。
午後のおやつは半分に置き換える
3時になると甘いものに手が伸びるという人は、ケーキ一切れをりんご半分に替えてみるのが手軽です。ケーキ一切れは300kcal前後ですが、りんご半分なら70kcalほど。噛む回数も多いため、満腹感を得やすくなります。
袋ごと菓子を置かず、りんごを半分だけ切って出すと食べすぎを防ぎやすくなります。甘いものを完全にやめる必要はなく、置き換えの選択肢を一つ持っておくのが現実的です。
夕食後は4分の1個までと決める
国の食事バランスガイドでは、果物は1日200gが目安とされています。りんご1個は皮付きで250gほどあり、それだけで目安を超えてしまいます。夕食後にテレビを見ながら1個丸ごと食べるのは、果物の摂取量としては多めです。
りんごの甘みの中心は糖で、とりすぎると中性脂肪に変わりやすいとされます。夜は体を動かす量が減るため、夕食後なら4分の1個までにし、朝・昼・午後と合わせて1日1個に収めるのが目安です。
寝る前の1個だけは注意する
夜のりんごが毒と言われてきたのは、胃が弱い人への昔ながらの注意だったと考えられます。りんごには食物繊維に加えて酸も含まれるため、夜の空腹時に1個食べると胃がもたれることがあります。胸焼けしやすい人は、寝る前の2〜3時間は食べ物を控えたほうがいいとされています。
寝る直前に食べると胃が休まらず、眠りが浅くなったり翌朝に胃が重く感じたりすることもあります。どうしても寝る前に口寂しいなら、温かいお茶と一緒に2切れほどにするか、すりおろして少量にすると負担を減らせます。
りんごで損をしやすい3つの習慣
- 皮を厚くむいて捨てる:食物繊維は100gあたり皮付きで1.9g、皮なしでは1.4gに減ります。皮の近くにはポリフェノールの一種も多いため、流水でよく洗い、薄くむくか皮ごと食べるのがおすすめです。むいた皮は紅茶と煮出してアップルティーにする方法もあります。
- ジュースで代わりにする:ストレートのりんごジュースでも食物繊維はほとんど残りません。果物をそのまま食べる人とジュースを多く飲む人では、糖尿病のリスクに差が出たという大規模な調査もあります。飲むなら食事と一緒にコップ半分、1日1杯までを目安にしたいところです。
- 切っておきっぱなしにする:茶色くなるのはポリフェノールが空気に触れて変化するためです。水200mlに塩をひとつまみ溶かしてさっとくぐらせると変色しにくくなりますが、味や香りは落ちていくので、食べる分だけその都度切るのが基本です。
合わせると食べやすい組み合わせ
りんごは単体でも役立ちますが、不足しがちな栄養を補う組み合わせも便利です。
- りんごとチーズ:プロセスチーズ1個(20g)にはカルシウムがおよそ130mg含まれます。りんごに少ないタンパク質とカルシウムを補えるため、午後のおやつに向いています。
- りんごと豚肉:豚肉には糖をエネルギーに変えるビタミンB1が多く、すりおろしたりんごに肉をつけてから焼くと柔らかく仕上がると言われます。
- りんごと人参:人参はベータカロテンが多く、りんごと一緒にすりおろすと特有の匂いが和らぎます。ジュースと違い、すりおろしなら繊維も残ります。油と一緒にすると吸収されやすくなるため、細切り人参を軽く炒めて和えるのも一案です。
よくある疑問
糖尿病でもりんごを食べていいかという質問に対しては、食品交換表では果物は1日80kcalが目安で、りんご半分ほどに相当します。治療中の人は量を主治医や管理栄養士と決めてください。
りんごを食べると口の中がかゆくなる場合は、花粉症のある人に果物でアレルギー症状が出ることがあります。続くようなら自己判断せず医療機関で相談してください。
冷やすと甘く感じやすい性質がありますが、冷えすぎた果物は胃に負担をかけるため、冷蔵庫から出して少し置いてから食べるのが安全です。国産りんごの表面に見えるてかりは、ワックスではなく「油上がり」と呼ばれる自然な脂質が出た状態であることが多いとされています。
夜のりんごは毒ではありません。朝に4分の1、昼前に1切れ、午後に半分、夕食後に4分の1と分ければ、1日1個を無理なく使えます。寝る前だけは量と時間を調整し、胃の弱い人はすりおろしや2切れ程度にとどめるのが現実的です。