片づけでは、手放すものを一つずつ探すより、残すものを先に決めるほうが早いことがあります。壊れても直せない、なくなっても同じものがいつでも買える、しまっておく理由がなんとなくしかない。この三つが揃ったものは手放す。逆に、直せる、もう買えなくなる、今日から使えるものは、捨てる前に一度点検したい。ここでは台所や押入れに残りがちな8つの道具と、手入れの手順をまとめます。
鉄のフライパンと鍋は、錆びても終わりではない
黒くて重く、赤い錆が浮いていても、穴が開いていなければ使えます。錆はタワシでこすって落とし、火にかけて水気を飛ばし、薄く油を塗れば済みます。黒いまだらは汚れではなく、焼きついて膜になった油です。あの膜がある鍋のほうがくっつきにくくなります。
使い始めの数回は油を少し多めにし、野菜を炒めて捨てる油ならしをすると楽になります。使った後は洗剤を控えて洗い、火にかけて乾かすだけ。毎回洗剤でゴシゴシすると、せっかくの膜が落ちます。重い鍋は1日1回使うものだけ手前に出しておくと、奥にあるから重く感じるという状態を避けられます。
竹のかごとざるは、乾かせば形が崩れない
国産の竹ざるやかごは、乾かしてさえいれば形が変わりにくく、熱にも強い道具です。プラスチック製のざるは使い込むと編み目が白く毛立って米粒が引っかかりますが、竹は立てて干せば長持ちします。安く売られている竹製品は海外製が増え、国内で竹を割って編む仕事は減っています。
古いものは縁を細く割った竹や麻糸でぐるぐる巻いて止めてあることが多く、手編みの目安になります。ほつれてきたら、その部分を麻糸で巻けば止まります。湿ったまましまうと黒くなるため、使ったら水気を切って立てて干す。竹は使っているほうが長持ちする道具です。
一枚板のまな板は削り直しがきく
黒ずんできた、反ってきた、匂いが取れない。それは寿命ではなく、削り直しの合図です。木工所や刃物店で表面を薄く削ってもらうと、平らな状態に戻ります。厚みが2cm以上あれば、まだ何度も削れます。
毎日の手入れでは、使った後に立てて乾かすかどうかで寿命が大きく変わります。平置きすると下になった面が乾かず、反りの原因になります。立てる場所がなければ、鍋の蓋を立てる仕切りを一つ空けるだけで足ります。樹脂製のまな板は傷が残ったら交換しかありませんが、一枚板は削って戻せる点が大きな違いです。
ほうろうは欠けていなければ長く使える
ほうろうは金属にガラスを焼き付けたもので、匂いも色も移りにくい素材です。梅干し、味噌、ぬか床など、塩分や酸の強いものを入れても平気です。ただし、ぶつけて欠けて中の金属が出ているものは、そこから錆びるため食品には使わないほうが安全です。
気をつけることは二つ。重ねて収納しないこと、空のまま強火にかけないことです。ガラスなので急に熱くしたり冷やしたりすると、内側に細かいひびが入ります。使っていない大きさのものが複数あるなら、一つを作り置き専用と決めると出番が増えます。
曲げわっぱと木の弁当箱は、ご飯だけ入れると長持ちする
木が余分な水気を吸うため、ご飯がべたつきにくいのが曲げわっぱや木の弁当箱の特徴です。使わなくなる理由は洗うのが面倒ということが多いのですが、ぬるま湯とタワシで洗い、伏せずに立てて乾かすだけで十分です。
内側がツルツルして艶のあるものは漆やウレタンが塗られており、油ものも入れられます。白木のまま木の地肌が見えるものはご飯やおにぎり向きで、油の多いおかずは染みるため別の容器にします。黒ずみは濡れたまま蓋をして置いた後、内側の角から出やすくなります。乾かしてからしまうだけで防げます。塗り直しや修理を受ける工房もあるため、黒ずんだからといって捨てる品物ではありません。
切れない刃物は、まず研ぎを考える
切れなくなった包丁は壊れていません。刃先が丸くなっているだけです。靴修理店や刃物店で研いでもらえます。家庭用包丁なら刃渡り20cmまでで1650円ほどという料金を出している店もあります。新しい包丁を買うより安く、手に馴染んだ重さのまま切れ味が戻ります。
裁ちばさみは、布が噛み合わなくなったと思ったらネジが緩んでいるだけの場合もあります。糸切りばさみは、刃を少し開いて紙を先まですっと切れるかで判断します。波刃のパン切り包丁やセラミックのものは受けてもらえないことがあるため、店の案内を先に確認してください。
伝統的工芸品の生産額は、昭和58年の5400億円から令和4年には1050億円へ、従事者は28万8000人から4万8000人余りへ減ったという調査があります。竹を編む人、刃物を研ぐ人、木を削る人が減っているということです。近所の研ぎ屋が古臭いのではなく、最後の一軒かもしれないという視点で探してみてください。
蛍光灯は慌てて捨てず、買いだめもしない
水銀に関する国際的な取り決めで、一般照明用の蛍光ランプは製造と輸出入が種類ごとに段階的に禁止されています。丸形、コンパクト形、直管形で時期が異なるため、手元の器具に合うランプの扱いはメーカーや販売店の案内で確認するのが確実です。
使用は禁止されていません。家にある蛍光灯はこれまで通り使えます。慌てて器具ごと捨てるのも、何十年分も買いだめするのも、どちらももったいないことになります。LEDに変える場合、ランプを差し替えるだけでは済まないことがあります。器具内部の部品を外す工事や、器具ごと交換したほうがいい場合もあるため、自分でランプだけ買って付け替えると点かない、熱を持つことがあります。業者か販売店に聞いてください。
台所や洗面所など毎日何時間もつける場所だけ先に変え、使っていない部屋は球が切れたときに考える。急ぐ順番をつけるだけで、出ていくお金は変わります。予備の蛍光ランプは、今ある器具の分だけ1本か2本あれば十分です。
古い布は、最後まで使い切る
さらしやかやの生地で作られたふきん、古い手ぬぐい、ほどいた着物の布。奈良では16世紀の終わり頃から上質なさらしが織られていたとされます。古い木綿が水をよく吸うのは、何度も洗われて糸のねじれがほぐれているからです。新しい布にはあの吸い方はできません。
使い道はふきんだけではありません。蒸し器に敷く、出汁をこす、おにぎりを包む、切って鏡や窓を拭く、最後は周りを拭いて捨てる。一枚の布が役目を下げながら最後まで働きます。戸棚の奥にしまった贈答用のふきんの束は、下ろして今日から使うのが一番気持ちのいい使い方です。
水銀の体温計と血圧計だけは、早めに手放す
水銀体温計や水銀血圧計は、製造と輸出入が2021年1月から禁止されています。使用そのものが禁止されているわけではありませんが、問題は割れたときです。床にこぼれた水銀を掃除機で吸うと、熱で気体になるため吸ってはいけません。普通ごみとして出すこともできません。多くの市区町村で回収方法が決まっているため、使わないなら自治体の案内に沿って早めに処分してください。
捨てるかどうか迷ったときは、直せるか、もう買えなくなるか、今日から使えるかを先に確認します。この三つに当てはまるものは、捨てる前に一度手入れをして使ってみる。残すものが決まれば、残りは迷わず手放せます。