たとえば、お腹周りが気になって朝食を抜き、仕事が終わると毎晩走り始めた人がいたとします。睡眠は5時間ほど。最初の数日は「これで変わる」と手応えを感じても、1週間もすると昼間にだるさが出て、夜は空腹でかえって食べすぎてしまう。運動を増やそうとしても疲れが残って続かない。こういうとき、多くの人は「もっと減らさないと」「もっと強く動かないと」と考えます。けれど内臓脂肪を減らす場面では、その「もっと」が逆に計画を崩すことがあります。
コルチゾールは悪者ではない、休めない状態が問題
ストレスがかかると、体はすぐ使えるエネルギーを用意します。その調整に関わるホルモンの一つがコルチゾールです。朝に目を覚ますときも、体を動かすときも必要なもので、コルチゾールをゼロにすることが目標ではありません。問題になるのは、体が休めない状態が続くことです。寝不足が続く、無理な断食を続ける、疲れているのにきつい運動を毎日する。これらが重なると、睡眠や食欲、活動量が乱れやすくなり、脂肪を減らす生活そのものが続かなくなります。
ただし、お腹が出ているからコルチゾールが高い、夜中に目が覚めたからコルチゾールが高い、と決めつけることはできません。人によって原因も反応も違います。大事なのは、ホルモン値を想像で断じることではなく、睡眠時間や朝の疲れ、日中の動きやすさといった基本を確認することです。
内臓脂肪は部分やせできない、でも生活改善で減らせる
内臓脂肪はお腹の臓器の周りにつく脂肪で、皮膚の下につく皮下脂肪とは性質が少し違います。増えすぎると血糖や脂質の代謝に悪い影響が出やすくなります。一方で、腹筋を100回しても内臓脂肪だけを選んで燃やすことはできません。お腹だけを狙って落とすという考え方は現実的ではありません。
それでも、運動や体重減少などの生活改善で内臓脂肪は減らせます。しかも体重が大きく変わらなくても、腹囲や内臓脂肪が変わることがあります。ですから毎朝の体重だけに振り回されず、数週間の平均と腹囲を見ること、そして何より続けられているかを見ることが大切です。
4つの調整は、結局「動いて整えて休む」につながる
ここで必要なのは、もっと頑張る量を増やすことではありません。脂肪を減らす行動を、体に負担をかけすぎず続けられる形に整えることです。次の4つは、それぞれ別の健康法ではなく、同じ考え方に沿っています。
1. 食後に10分だけ歩く
夕食にご飯と焼き魚と味噌汁を食べたあと、そのままソファに座るのはごく普通の流れです。でも、座る前に10分だけ歩いてみる。近所を一周する、コンビニまで行って戻る、家の中を少し早めに歩くのでも構いません。食事をすると血液中にブドウ糖が増えますが、そのときに筋肉を動かすと、筋肉はブドウ糖をエネルギーとして使います。人を対象にした比較試験では、1日30分まとめて歩くより、3回の食後に10分ずつ歩いた方が食後血糖の上がり方が小さかったという報告もあります。特に夕食後で差が大きかったとされています。10分歩けばその場で内臓脂肪が溶けるわけではありませんが、毎日の血糖管理と活動を無理なく積み重ねやすくなります。始めるタイミングが「夕食が終わったら」と明確なのも続けやすい点です。
2. 運動を「やるかゼロか」にしない
内臓脂肪を落とそうと急に毎日走り始め、最初の1週間は頑張れても、足が痛くなったり疲れが残ったりして2週間目に全部やめてしまう。強い運動が悪いのではなく、続けられない量に設定したことが問題です。有酸素運動も筋力トレーニングも内臓脂肪を減らす助けになりますが、全員が毎日きつい運動をする必要はありません。日本の身体活動の目安では、成人は今より少しでも多く動くことが基本で、歩行は1日60分以上、歩数ではおよそ8000歩が一つの参考になります。ただし、今3000歩なら明日から8000歩にする必要はありません。まず100歩だけ増やしてみる。筋トレをしていないなら、週2回の椅子から立ち上がるスクワットから始めてもいい。すでに運動している人は、毎回さらに強くする必要はなく、疲れが翌日まで強く残るなら軽い日を作ることも回復の一部です。
3. 睡眠を削らない
睡眠不足や強い心理的ストレスが続くと、体は十分に回復しにくくなります。日本の睡眠ガイドでは、成人は個人差を考えながら少なくとも6時間以上を一つの目安として、必要な睡眠時間を確保するよう勧めています。もし夜1時に寝て朝5時に起きているなら、長時間断食や毎日のきつい運動を足す前に、まず睡眠を30分増やせないか考えてみてください。寝る直前までスマホや動画を見ているなら終わる時間を30分早める、帰宅が遅く疲れている日は散歩だけにする、起きる時間が大きく違うなら朝の時間を揃える。脂肪を減らす計画の中に、回復の時間も含めることが、コルチゾールを適切に保つ考え方につながります。
4. 断食を長さ競争にしない
16時間できたから次は18時間、次は20時間、最後は1日1食。数字が伸びると効果も高くなるように感じますが、断食の目的は空腹時間の記録を更新することではありません。時間を決めて食べる方法に内臓脂肪を減らす結果が報告されていますが、普通の食事制限より必ず大きな効果が出るとは言えません。断食は使える方法の一つであって、魔法のスイッチではありません。16時間を超えればオートファジーが始まると思われがちですが、人間では16時間で必ず始まるといえるほど単純ではありません。今の断食時間で睡眠が安定し、日中に普通に動け、食事の時間に極端な食べすぎをしていないなら続ける選択肢があります。反対に、眠れない、疲れが強い、夜になると食欲が止まらないなら、12時間や14時間に戻して様子を見てください。長いほど良いというルールはありません。
最初の7日間は一つだけでいい
何から始めればいいか迷うなら、最初の7日間は夕食後に10分歩くことだけでも十分です。それができたら次の週に睡眠を30分見直し、その次に週2回の筋トレを加える。断食をしている人は、最後に今の時間が本当に自分に合っているかを確認する。一度に全部変えなくて大丈夫です。7日間で見るのは、完璧にできたかどうかではなく、来週も続けられそうかどうかです。体重は毎日測っても構いませんが、1日の増減だけで成功か失敗かを決めないでください。水分や塩分でも体重は動きます。
なお、糖尿病の薬やインスリンを使用している方、妊娠中の方、低体重の方、摂食障害の経験がある方は、自己判断で長時間の断食を始めず、医師や管理栄養士に相談してください。
お腹周りが変わらないとき、努力が足りないのではなく、努力の形が体の回復と噛み合っていない可能性があります。もっと減らす、もっと動くの前に、まず夕食後に座る前の10分を試してみる。それだけで、体を変える計画の続け方が少し変わるかもしれません。