職場の同僚や友人から「AI関連株を買わないと損だよ」と言われたことはないでしょうか。SNSを開けば「一生に一度のチャンス」という言葉が並び、自分だけ取り残されているような気持ちになることもあります。ただ、こうした熱気の裏で株式市場には特定の企業への集中が進んでいます。この記事では、AI投資をめぐる現状を整理し、周囲の声にどう向き合うかの判断材料をまとめます。
熱狂の中心にある「7社」への集中
米国株の代表的な指標であるS&P500は、実はごく一部の巨大企業に大きく依存しています。Amazon、Microsoft、Alphabet、Meta、Apple、Tesla、NVIDIAの7社、いわゆる「マグニフィセント7」が、S&P500全体の約36%を占めるという試算があります。
この7社はいずれもAI分野に巨額の投資を行っています。そのため、インデックス投資をしている人でも、知らないうちにAI関連企業の将来に資金の多くを預けている状態になりがちです。分散しているつもりでも、実際には特定のテーマに偏っている可能性があります。
AI関連企業のお金の流れに潜む循環
市場関係者の間では、AI関連企業の間で資金がぐるぐると回っている構造が指摘されています。たとえば、MicrosoftがOpenAIに出資し、OpenAIはその資金でMicrosoftのクラウドを利用する。MicrosoftはNVIDIAからチップを購入し、NVIDIAはその一部を再びOpenAIに投資する、といった流れです。
これは、友人に千円を払って穴を掘ってもらい、その友人が穴を埋めるのを千円でこちらに頼むようなもの、と例えられることがあります。実際にはもっと複雑ですが、売上として計上される金額の一部が、実質的な需要を上回っている可能性は否定できません。
OpenAIの評価額は120兆円規模とされる一方、売上は数兆円にとどまるとの見方もあります。赤字が続いているという指摘もあり、現在の株価や評価額を将来の利益で正当化できるかはまだ不透明です。
周囲の「今がチャンス」にどう返すか
こうした状況で、職場や友人から「今が買い時だ」と強く勧められることがあります。熱心な相手に対して、どう対応するかは関係性によって異なります。
一つの方法は、自分の投資方針を確認することです。長期の分散投資を基本にしているなら、特定のテーマに追加で資金を振り向ける必要はない、と自分の中で線引きできます。
相手の情報源を尋ねるのも有効です。「どの企業の、どの数字を見てそう思うの?」と聞くことで、相手の根拠がはっきりしない場合もあります。無理に反論して関係をこじらせるより、質問で冷静さを取り戻す方が安全なこともあります。
たとえば、次のように伝えるのは一例です。「自分はインデックスで十分かなと思ってる。大きく張る余裕もないし、今のままでいくよ」。これは仮定の言い方ですが、相手を否定せずに自分の立場を示せます。
ただし、相手が感情的になっていたり、職場の上下関係がある場合は、深入りせずに話題を変えるのも現実的な選択です。距離を置くことが必ず正解とは限りませんが、自分の判断を守るために必要なこともあります。
個人ができる備え
AIバブルが続くか崩壊するかは誰にも分かりません。だからこそ、個人としてできる備えを整理しておくと安心です。
- 投資をやめないが、無理なレバレッジはかけない:長期的に市場に居続けることは重要ですが、借金や信用取引で大きく張ると、想定外の下落で身動きが取れなくなります。
- 収入を増やす余力を作る:暴落時には割安な資産を買えるチャンスが生まれます。そのときに現金や余剰資金があると選択肢が広がります。
- 資産全体で分散する:株式だけでなく、債券、金、不動産、暗号資産など異なる性質の資産に分ける考え方があります。暗号資産は値動きが大きいため、あくまで余裕資金の範囲で検討するのが無難です。
これらはあくまで一つの考え方で、全員に当てはまるわけではありません。自分の生活費やリスク許容度に合わせて調整することが前提です。
ドットコムバブルとの違いと共通点
現在の状況は、1990年代末のドットコムバブルと比較されることがあります。当時もインターネットは本物の技術でしたが、多くの企業が利益を出せないまま消えていきました。一方で、生き残った企業が後の成長を支えたのも事実です。
AIにも実用性があり、収益化への道筋が見えている部分はあります。しかし、高い評価額、売上の循環性、熱狂的な期待、拡大の限界といった、バブルの兆候とされる要素が揃っているのも確かです。過去と完全に同じとは言えませんが、似た空気を感じる場面は少なくありません。
大事なのは、AIが本物かどうかではなく、今の価格が将来の利益に見合っているかどうかです。周囲の熱気に流されず、自分の資産と生活のバランスを確認することが、結局は一番の備えになります。