たとえば職場の昼休み。12時にお弁当を開く人と、まだ朝から何も口にしていない人がいる。どちらも16時間断食をしていると言うけれど、食事の時間帯は正反対だ。同じ16時間なら体への効果も同じなのか。内臓脂肪を減らしたいと思ったとき、朝食を抜くのと夕食を早く終えるのでは、どちらが理にかなっているのか。
結論から言えば、内臓脂肪だけを見るなら、今の研究では明確な優劣はついていない。ただし体重やインスリンまで含めると、食事を早い時間に終える方がわずかに有利なデータがある。白黒つけたくなる問いだが、測る指標によって答えが変わるのが実際のところだ。
同じ16時間でも、体の中で起きていることは違う
朝8時に朝食を食べる人と、前日夜8時から何も食べていない人。午前中の体の状態はかなり異なる。朝食を食べた人は血糖値が上がり、膵臓からインスリンが出る。インスリンは血液中の糖を筋肉や肝臓へ届け、エネルギーとして使いやすくする合図だ。一方、前日から断食が続いている人は、新しい食事が入ってこないため、肝臓のグリコーゲンや脂肪由来のエネルギーを使い続ける。
この場面だけを見ると、朝食を抜いた人の方が脂肪を使う時間が長く、有利に見える。しかし、ここに一つの落とし穴がある。
脂肪を使う時間と、体脂肪が減ることは別の話
断食中は食後より脂肪を燃焼する割合が高くなる。だが、その後にたくさん食べれば1日全体の結果は変わる。朝に脂肪を使っていても、夜までに食べ過ぎれば意味は薄くなる。逆に、夕食を早く終えたからといって必ず痩せるわけでもない。内臓脂肪が減るかどうかは、1食や一晩だけでは決まらない。1日の食事量と、それが何週間も積み重なった結果で変わる。
ここで一度、朝食抜きと夕食抜きの勝負は振り出しに戻る。次に考えるべきは、食事を1日のどこに置くかという体内時計の視点だ。
体内時計から見ると、食事の時間帯は無視できない
私たちの体は1日中同じようには働いていない。朝と夜では、同じ食事を同じ量だけ食べても血糖やインスリンの反応が少し違う。一般に、朝から昼の方が夜遅い時間より糖を処理しやすい傾向がある。体が活動する時間と食べる時間が揃いやすいからだ。つまり、何時間食べなかったかだけでなく、その8時間の食事枠を1日のどこに置いたかも関係する。
小規模な試験では、午後3時までに食事を終える生活を数週間続けたところ、体重が大きく減らなくてもインスリンの働きや血圧に改善が見られた。別の試験でも、朝から午後早めまでに食べる方法は、夜まで長く食べる方法より24時間の平均血糖が少し低くなった。こうした結果を見ると、夕食を早く終える方が代謝に有利に思える。
内臓脂肪だけを測ると、優劣はまだはっきりしない
ところが、内臓脂肪に限ると話は変わる。内臓脂肪をMRIで直接測った試験では、早い時間に食べた人だけが大きく減ったわけではなく、遅い時間に食べた人との差もはっきりしなかった。体重計では分からないお腹の奥の脂肪を見ても、朝食抜きと夕食抜きの間に明確な差は出ていない。つまり、内臓脂肪だけを見るなら、どちらが優れているとはまだ言えない。
一方、41件の臨床試験、計2万2187人分のデータをまとめた解析では、時間を決めて食べる方法全体で体重や脂肪量、空腹時の血糖、空腹時のインスリンなどに改善が見られた。さらに早い時間帯に食べる方法と遅い時間帯に食べる方法を比べると、早い時間帯の方が体重と空腹時のインスリンで少し有利だった。
ただし、これは魔法のような差ではない。夕食を抜けばお腹の脂肪が一気に消えるという意味ではない。研究が示しているのは、同じ16時間なら夜遅くまで食べ続けるより、食事を少し早い時間に終える方が代謝には有利かもしれない、という現実的な方向だ。特に夜遅くまでだらだら食べ続ける人には意味がある。
現実に取り入れるなら、夕食を完全に抜かなくてもいい
だからといって、明日から夕食を完全に抜く必要はない。日本では夕食は家族と過ごす時間でもあり、仕事が終わってからやっと落ち着いて食べる人も多い。午後4時に食事を終える生活が合わない人もいる。最初から夕食をゼロにしなくても大丈夫だ。
まず、自分が今何時までカロリーのあるものを口にしているか確認してみる。夕食だけでなく、夜のお菓子やお酒も含めてだ。夜10時まで何か食べているなら、最初の目標は9時で終えること。慣れたら8時30分、その次は8時というように、30分ずつ前へ動かせば十分だ。朝食を抜いている人も、夜の終わりを早くする方が現実的な場合がある。朝を削るより、夜の余分な一口を減らす方が楽な人もいる。
食事時間だけ整えても、食べる量が増えたら意味は薄くなる。断食の後にラーメン大盛とチャーハン、甘い飲み物まで追加すれば結果は変わる。最初の食事は難しく考えなくていい。魚、卵、豆腐、納豆などのタンパク質、野菜、海藻、きのこ、芋類、そこに自分に合った量のご飯。日本の普通の定食で十分だ。高価な断食食品を用意する必要もない。食後に10分ほど歩くと、食後の血糖上昇を穏やかにする助けになる。
合わない場合もある
糖尿病でインスリンや血糖を下げる薬を使っている人は、自己判断で食事を抜かない方がいい。低血糖の危険があるため、食事時間を変える前に医療機関へ相談する必要がある。妊娠中、授乳中、成長期、痩せている人、摂食障害の経験がある人も、長時間の断食は慎重に考えた方がいい。体重や筋肉が減っている人では、断食より必要な栄養をきちんと取ることが優先される場合もある。
16時間という数字を達成することより、自分の生活の中で遅い食事を少し減らすことの方が目的に近い。続けられる形なら、12時間でも意味はある。夜の食事を30分早めて、食後に少し歩く。そういう始め方でも構わない。白黒つけたくなる問いだけれど、答えは一つではない。測る指標によって見える景色が変わることを知っておくと、食事時間の調整も少し気楽になる。