毎日のみそ汁や炒め物に玉ねぎを使っているのに、体の変化をあまり感じない。そう感じるときは、玉ねぎの切り方と置き時間に目を向けるのが近道です。玉ねぎの健康成分は、切ってから時間をおくことで増えるものと、水や熱で流れやすいものがあります。まず覚えておきたいのは、玉ねぎを最初に切って15分置くこと。そして、水に長くさらさないこと、茶色い皮のすぐ下まで使うこと。この3つを意識するだけで、いつもの玉ねぎの役割が少し変わります。
玉ねぎが体の中で起こす5つの変化
血管の内側のさびを抑える
玉ねぎに含まれるケルセチンは、皮の色にも関係する黄色い色素です。100gあたりおよそ20mg含まれ、身近な野菜のなかでは多い部類にあたります。北海道でケルセチンの多い玉ねぎを使った研究では、食べ続けた人の血管のしなやかさが改善したと報告されています。血管の内側は年齢とともに酸化しやすくなりますが、ケルセチンはその酸化を抑える役割が期待されています。
血液の流れを保つ
玉ねぎを切ったときに涙の原因になる辛み成分は、血液の塊をできにくくする働きがあると報告されています。この成分は、最初から玉ねぎの中にあるわけではありません。包丁で細胞が壊れ、酵素が働くことで、切ってからおよそ15分かけて生まれます。切ってすぐ火にかけると酵素の働きが止まり、十分に作られないまま加熱されることになります。
腸の菌の餌になる
玉ねぎ100gにはオリゴ糖が2〜3g含まれています。オリゴ糖は人の消化酵素では分解されにくく、大腸まで届いて善玉菌の餌になります。善玉菌が増えると腸の壁を守る酸が作られ、便の状態も整いやすくなります。ヨーグルトだけでは菌の餌が足りないことがありますが、玉ねぎはその身近な供給源です。
食後の血糖を穏やかにする
食後に強い眠気が出るのは、血糖が急に上がって下がるサインかもしれません。生の玉ねぎ100gを食べた人で、4時間後の血糖が下がったという小規模な調査があります。ケルセチンと辛み成分が糖の処理を助けていると考えられていますが、すべての人に同じ結果が出るわけではありません。ご飯の前に玉ねぎのサラダを少し食べるのは、取り入れやすい方法です。
骨を静かに支える
海外で50歳以上の女性を対象にした調査では、玉ねぎを毎日食べる人は骨密度が約5%高いという報告があります。玉ねぎの成分が骨を壊す細胞の働きを抑えるためではないかと考えられています。骨が弱ると転倒しやすくなり、外出が減って筋力が落ち、さらに転びやすくなるという悪循環につながります。毎日の玉ねぎは、その最初のきっかけを減らす一助になるかもしれません。
台所でやりがちな3つのNG習慣
切った玉ねぎを水に長くさらす
辛みを抜くために水にさらす人は多いですが、辛み成分は水に溶けやすい性質があります。長くさらすほど、血液の流れを保つ働きも水と一緒に流れていきます。辛みを和らげたいなら、薄く切って15分空気にさらすだけで自然に抜けます。どうしても水を使う場合は、10秒程度にとどめるのが現実的です。
切ってすぐ火にかける
玉ねぎを切ったらすぐ鍋に入れる習慣があると、成分を作る酵素の働きが熱で止まってしまいます。先に玉ねぎを切っておき、ほかの野菜を切っている間に置くだけで、必要な成分が作られます。15分は手間を増やすのではなく、調理の順番を変えるだけの時間です。
皮をむきすぎる
ケルセチンは外側に近いほど多く含まれています。茶色い皮そのものにも、中身より多く含まれているといわれます。むくのは茶色い皮だけにして、その下の少し硬い1枚は刻んでスープや炒め物に使えます。茶色い皮も、よく洗ってだしを取るときに1枚入れると、色と一緒に成分を活かせます。
売り場での選び方と保存の基本
春の新玉ねぎは水分が多く辛みが少ないため、生で食べるのに向いています。一年中出回る黄玉ねぎは乾燥させたもので、ケルセチンが多めです。毎日の基本にはこちらを選ぶとよいでしょう。赤玉ねぎは色素も加わるので、サラダに1枚混ぜると彩りと成分の両方を増やせます。
黄玉ねぎを選ぶときは、皮の色が濃い茶色のものほどケルセチンが多い傾向があります。艶があって皮が乾いており、押して硬く、首の部分が細く締まっているものを選びます。芽が出かけたものや首が柔らかいものは、中から傷んでいることが多いので避けます。
保存は冷蔵庫に入れず、風通しの良い暗い場所で網に入れて吊るすのが基本です。湿気が一番の敵なので、買ったときの袋のまま置くと傷みやすくなります。新玉ねぎだけは水分が多いため、冷蔵庫の野菜室で1週間以内に食べきります。切ったものは15分置いてからラップで包み、冷蔵庫へ入れます。
玉ねぎと相性のよい食べ合わせ
納豆:納豆の酵素と玉ねぎの辛み成分が揃うと、血液を流れやすくする力が期待できます。玉ねぎのオリゴ糖は納豆菌の餌にもなるため、腸の面でも相性がよい組み合わせです。刻んだ玉ねぎ大さじ1を15分置いてから納豆に混ぜます。
酢:酢には食後の血糖の上がり方を穏やかにする働きが報告されています。薄切り玉ねぎ1個に酢100mlを合わせ、冷蔵庫で一晩置いた酢玉ねぎを、1日大さじ2〜3ほど食前に食べる方法があります。血糖と血圧の両方に気をつけたい人に向いています。
青魚:サバやイワシの油は血液を守る働きがありますが、空気に触れると酸化しやすい面もあります。玉ねぎのケルセチンはその酸化を防ぐ役割が期待できます。サバ缶に薄切り玉ねぎを乗せるだけでも、この組み合わせを手軽に取り入れられます。
1日の目安と注意点
玉ねぎは1日1/4個から1/2個程度で十分です。毎日のみそ汁や炒め物に入っている量でほぼ足りるため、特別に増やす必要はありません。加熱してもケルセチンは残りますが、辛み成分は熱で減ります。15分置いてから加熱すれば、両方の成分を取りやすくなります。
血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は、通常の食事量であれば問題ないとされますが、酢玉ねぎのように毎日まとまった量を食べる場合は医師に相談してください。体調や持病によって合わない場合もあるため、無理に量を増やさず、自分のペースで続けることが大切です。
玉ねぎの力を活かすのに、特別な量や道具は必要ありません。切ってから15分置く、水に長くさらさない、外側を使い切る。この小さな台所の順番が、血管や腸、骨を守る習慣の土台になります。今日の夕食で玉ねぎを最初に切ってみるところから始められます。