夜、布団に入ってから、友人との会話で出てこなかった名前や、つい口にした一言が気になって眠れなくなることはありませんか。60代になっても会話の反応がよく、新しいことを楽しんでいる人は、特別な脳トレだけに頼っているわけではありません。一日の終わり、寝る前の10分間に小さな工夫を重ねていることが多いのです。
ただし、ここで紹介する習慣は記憶力の向上や脳の若返りを保証するものではありません。十分な睡眠、適度な運動、バランスのよい食事、人との交流など、日々のさまざまな要素が関係しています。そのうえで、今夜からできそうなことを一つ選ぶための判断材料として整理します。
今日の出来事を3つだけ思い出す
布団に入って目を閉じ、朝食べたもの、誰と話したか、外で何を見かけたかなど、些細な出来事を3つ思い出してみます。スーパーで見かけた季節の果物、久しぶりに電話した友人、道端で咲いていた花。大きな出来事である必要はありません。
これは記憶をたどる練習というより、一日に注意を向け直すきっかけです。思い出せないことがあっても、自分を責めないことが大切です。すぐに出てこなければ「そんなこともあったかな」と気楽に構えるだけで十分です。友人との会話の内容を思い出そうとして出てこないと不安になる場合は、3つにこだわらず1つだけに減らすか、別の習慣を選ぶほうが向いているかもしれません。
今日初めて知ったことを1つ探す
年齢を重ねると生活の流れが決まり、毎日が似た繰り返しに感じられることがあります。すると周囲の変化に意識を向ける機会も少なくなりがちです。寝る前に、今日初めて知ったことを1つだけ思い出してみましょう。
新しい料理の作り方を知った、知らなかった言葉の意味が分かった、いつも通る道に別の店があると気づいた。本当に小さな発見で構いません。大切なのは、年齢に関係なく知らないことを面白がる姿勢です。まだ知らないことがあると思えるほうが、日常の中に楽しみを見つけやすくなります。ただし、知識を得ることが脳の健康に直接つながるとは限りません。あくまで、毎日を同じに感じる人にとっての小さな刺激として試してみるものです。
気になっていることを短く書き出す
布団に入ると、昼間は忘れていた心配事が次々に浮かんでくることがあります。あの用事を忘れていた、明日は何時に出かけるのだっけ、あの人にあんな言い方をしなければよかった。考えないようにするほど同じことが頭から離れなくなる場合もあるでしょう。
そんなときは寝る前に紙とペンを用意し、気になっていることを一言ずつ書いてみます。たとえば「明日病院に電話する」「友人に返事をする」「週末の買い物を確認する」といった具合です。今すぐ解決しようとせず、明日できることは明日に回します。書き出すことで、頭の中で何度も考え続ける代わりに、問題を整理する助けになることがあります。
ただし、書くことでかえって考え込んでしまう人は無理に続ける必要はありません。寝る前に長い反省会を始めるのも避けたいところです。友人とのやりとりを後悔しているなら、「明日はこう返そう」と一つだけ注意点を決めて終えるくらいが現実的です。謝罪や対応が必要な場合は、寝る前に結論を出そうとせず、日中に改めて考えるほうが安全です。
今日ありがたいと感じたことを1つ思い出す
店員の丁寧な対応、家族が食事を用意してくれた、友人の何気ない言葉。特別な感動がなくても、天気が良くて気持ちよかった、温かいお茶がおいしかった、という程度で十分です。
私たちは嫌な出来事があると、そのことばかり何度も思い返してしまいがちです。しかし一日の中には、嫌なことだけでなく、何気ないうれしさや安心できる瞬間もあるはずです。寝る前にそうした出来事に目を向けると、気持ちを落ち着かせ、一日を違う角度から見直すきっかけになります。
もちろん、つらいことがあった日に無理やり感謝を探す必要はありません。今日は大変だったけれど、温かい布団で休める。それだけでもよいのです。感謝の習慣は、感情を抑え込むために使うものではないことを忘れないようにしたいところです。
眠る直前まで情報を追いかけない
布団に入ってからスマートフォンでニュースを見たり、動画を次々に再生したりしていませんか。1つだけ見るつもりが、気づけば30分、1時間と過ぎてしまう夜もあるでしょう。スマートフォンそのものが脳を衰えさせると決まっているわけではありません。ただ、画面を見続けることで就寝時間が遅くなったり、刺激の強い情報で気持ちが落ち着かなくなったりすると、睡眠に影響することがあります。
寝る前の10分間だけでも、画面から離れる時間を作ってみましょう。スマートフォンを枕元から少し離しておく、照明を落とす、静かな音楽を聞く、ゆっくり呼吸をする。それだけでも眠るための準備がしやすくなります。夜にすべての情報を確認しなくても、困ることは意外と少ないものです。完全にスマホをやめるのが難しければ、通知を切る、動画の自動再生を止めるといった小さな変更から始めるのも一つの方法です。
全部を一度に変えようとしない
ここまで、寝る前の過ごし方として5つの選択肢を紹介しました。どれも特別な道具や大きな努力は必要ありませんが、すべてを一度に取り入れようとすると負担になります。今夜は一つだけ、できそうなことを試してみてください。
記憶をたどるのがつらい日は、情報から離れて休むことを選ぶ。心配事が強い夜は、書き出す代わりにゆっくり呼吸するだけにする。自分に合わないと感じたら、無理に続けず別の方法を試すのが現実的です。昨日より少し穏やかに眠れたなら、それは十分な変化です。