台所の棚にあるお酢を、毎日大さじ1杯。血糖値や内臓脂肪に良いと聞いて始めた人もいるかもしれません。大さじ1杯の酢酸には、食後の血糖上昇をゆるやかにしたり、内臓脂肪を少しずつ減らしたりする働きが期待できます。ただし、飲み方と種類を間違えると、歯や食道を傷つけるだけでなく、肝心の血糖への作用がほとんど働かなくなります。
ここでは、大さじ1杯のお酢に期待できる変化と、続けるうえで避けたい3つの飲み方、ラベルでの選び方を整理します。
大さじ1杯のお酢に期待できる5つの変化
食後の血糖値をゆるやかにする
昼食後に強い眠気が出るのは、食後血糖が急上昇し、その反動で下がるときに起こりやすい現象です。小規模な試験では、食事と一緒に大さじ1杯程度のお酢を取ると、食後の血糖上昇が穏やかだったという結果があります。炭水化物と一緒に取った場合、酢の量が多いほど血糖の上がり方が小さかったという報告もあります。
これは酢酸が、食べ物が胃から腸へ進む速さを緩めるためと考えられています。中高年になると上がった血糖を戻す力が少しずつ鈍るため、食卓でのひと工夫が助けになります。
内臓脂肪と体重の小さな変化
日本で行われた試験では、毎日大さじ1杯のお酢を12週間続けた人に、内臓脂肪と体重の減少が見られました。体重の変化はおよそ1〜2kgで、派手な数字ではありませんが、習慣として続けた場合の小さな変化です。なお、これは酢メーカーによる研究で、やめると4週間で元に戻ったとも報告されています。
酢酸には脂肪を溜め込む働きを抑え、燃やす働きを助ける可能性があるとされます。お酢は痩せ薬ではなく、毎日続ける人にだけ静かに効く習慣といえます。
疲れへの影響は限定的
大さじ1杯の酢に含まれる酢酸はおよそ0.7g。エネルギーを作る回路に入り、糖の補充を助ける可能性があります。ただし、人での証拠はまだ多くなく、疲れが確実に取れると断言できる段階ではありません。それでも、食事の糖をゆっくり使える体になると、午後のだるさが少し軽くなることは考えられます。
高めの血圧を下げる補助
血圧が高めの人が毎日大さじ1杯を10週間続けると、血圧が下がったという試験があります。酢酸が血管を緩める働きを後押ししている可能性があります。ただし下がり幅は大きくなく、薬の代わりにはなりません。また、酢の酸味は塩を減らしても料理をおいしくしてくれるため、減塩の助けにもなります。
腸内の善玉菌を助ける
便秘がちでお腹が重い人にとって、お酢に含まれるグルコン酸は胃や小腸で吸収されず大腸まで届き、善玉菌の餌になります。腸内の畑に肥料をまくような働きです。酢酸も、善玉菌が腸内で作る短鎖脂肪酸と同じ仲間で、腸にとってなじみの深い成分です。
飲み方で台無しになる3つのNG
原液のまま飲む
効きそうだからと大さじ1杯をそのまま口に流し込むのは危険です。お酢はレモンと同じくらい強い酸で、歯の表面を少しずつ溶かし、喉や食道の粘膜も荒らします。必ず水で5〜10倍に薄め、コップ1杯の水に大さじ1杯を基本にします。飲んだ後は水で口をすすぎ、歯を磨くのは30分ほど空けてからにします。
空腹のまま飲む
朝起きて何も食べずに飲むと、空っぽの胃に強い酸が直接触れ、胃の壁を刺激します。中高年の胃は若い頃より傷つきやすくなっています。しかも、血糖への働きは食べ物と一緒でなければ発揮されません。お酢は食事中か直前に取るのが基本です。野菜のおかずを先に食べる昔ながらの順番は理にかなっています。
甘い酢ドリンクに頼る
飲みやすいからと甘い酢ドリンクを毎日1本飲む人もいますが、200ml1本に果糖が果物およそ5個分に相当する量含まれることがあります。血糖値のために飲んだ1本が、かえって血糖値を上げてしまうのです。選ぶなら砂糖の入っていない酢を自分で薄め、甘みが欲しい日は蜂蜜を小さじ半分までにします。
ラベルで選ぶ、続けやすいお酢
醸造酢を選ぶ
お酢には、発酵させて作る醸造酢と、酢酸を水で薄めて作る合成酢があります。研究で使われてきたのは醸造酢です。ラベルの名称に「米酢」「穀物酢」「りんご酢」などとあれば発酵由来です。さらに「純米酢」「純りんご酢」とあれば、その原料だけで作った印になります。
黒酢と米酢の違い
黒酢は米酢の4倍以上の米を使う規格があり、その分アミノ酸が多く、味はまろやかになります。ただし、酢酸の量はどの種類もほぼ同じです。血糖や脂肪への働きを目的とするなら、安い穀物酢でも大きくは変わりません。
栄養成分表示の炭水化物を確認する
酢ドリンクを選ぶときは、裏の栄養成分表示で100mlあたりの炭水化物を確認します。5gを超えたら甘い飲み物です。薄めて使うタイプも同じです。蜂蜜入り、果汁入りと書かれたものは砂糖と同じように血糖を上げるため、注意が必要です。開けた酢は冷蔵庫に入れなくても、蓋を閉めて暗い場所に置けば半年は風味が保てます。
お酢を生かす3つの飲み合わせ
麦茶で割る
麦茶には汗で失うミネラルが含まれ、お酢を足すと夏の水分補給がそのまま血糖対策になります。コップ1杯の麦茶200mlに、りんご酢を大さじ1杯。香ばしさで酸味が柔らぎ、食事と一緒にゆっくり飲めます。冷やしすぎず、一気に飲まないことが胃を守ります。カフェインがないので夕食にも合わせられます。
無調整豆乳でとろみを
豆乳にお酢を入れると、タンパク質が酸で固まり、飲むヨーグルトのようにとろりと変わります。無調整豆乳200mlにお酢大さじ1杯を混ぜ、1分待つだけです。豆乳のタンパク質は血糖の上がり方をさらに穏やかにします。調整豆乳には砂糖が入っているものが多いため、無調整を選びます。
玉ねぎと合わせる
薄切りの玉ねぎ1個にお酢100mlを合わせ、冷蔵庫で一晩置けば、玉ねぎの成分とお酢の酸が一緒に取れます。飲まなくてもよく、1日大さじ2杯を目安にご飯の前に続けられます。続けやすさではこれが一番です。
飲む量と注意したい人
1日に取る量は大さじ1〜2杯までが目安です。それ以上取っても効果が増えたという報告はなく、胃への負担が増えるだけです。飲まずに料理に使っても同じで、酢酸は熱に強いため、酢の物でも煮物でも何に使っても取った量は変わりません。
糖尿病の薬や利尿薬を飲んでいる人、逆流性食道炎や胃潰瘍がある人は、量や続け方を主治医に相談してください。お酢は血糖の波を抑え、内臓脂肪や血圧、腸を支える可能性があります。その力を生かすのは、薄めることと食事と一緒に取ること。この2つを守って、今日の夕食から棚のお酢を食卓に出してみてください。